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観測者の足跡

観測者ハ足跡ヲ残シタ。

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#2

【お断り】
#1に続いて、アニメ「PSYCHO-PASS」のあれやこれを整理するメモ。
基本自分用なので文脈が乱れてるよ。



ーなぁ、どうなんだ、狡噛。君はこの後、僕の”代わり”を見つけられるのか…?-

最終話から見る槙島聖護という人間。
あれだけ多くの殺人を結び付けて、それでも公安の目に、シビュラの目に引っかからなかった槙島。彼の最期の問い掛けはこうだった。

他人を必要としない世の中。自分で何も決められず、ただシビュラの信託のままに未来へ向かって行く飼いならされた家畜のような社会。さながらそれは小さな監獄のようだ、と。
人は自ら何かを決断した時に、初めてその価値を得る事ができる。そう言ったんだったか…。
ある意味、社会そのものに失望していたように思う。その裏には、シビュラに、社会に認識される事の無い彼にしか解らない孤独や疎外感もあったのかもしれない、と狡噛は言っていた。

取り換えが利いて、皆誰かのスペアでしか無くて。そんな生き方に一体何の意味があるのか。自分の生まれてきた意味、生きる価値、それが全く見えない・必要としないシビュラの支配する社会。
槙島は、ある種「個」が尊重される社会を夢に見たのだろうか。

槙島の問い掛けに、狡噛は「そんなのは二度と御免だ…」答えている。
槙島が死んだ後にまた槙島に代わる代理を見つける。そんなものは望まない。そう受け取れる。
それを聞いた槙島は、笑っていた。満足げに。
追い詰められて、今にも自分の命は消されると解っているのに、もう二度と彼の望む命の駆け引きをする”ゲーム”は出来ないのに、その表情はこの上無く満たされていた。
それは狡噛が、槙島聖護という人間と向き合ってくれたという事に対する満足感か。
シビュラすら認識しなかった槙島聖護を、狡噛だけが真っ直ぐ向き合った。自分という人間を代わりの無い「個」として見てくれた。最悪な犯罪者として以上に、そうして槙島という人間に真に向き合ったのは、或いは狡噛だけだったと言える。

この二人は真逆のようでいて、本質的には限りなく似通った人間だと思う。
在り方は違うのに、思考のベクトルは同じで、行動すらも予測できた。孤独であったという部分も、最終的には同じだったのではなかろうか。社会に拒絶された、という意味に於いて。
何より、有名な文学や哲学の一文を引用する。こう言われたら、迷わずこう返すだろう。そこまで思考的に解っているのだから。では何が二人の生き方を分けたのか…。これだけ本質的に似ていても、やっぱり生き様は違う。信念も違う。それこそが槙島の思う「個」なのかもしれない。

自分の代わりはこの世にはいないんだという、ある意味一番聞きたかった言葉を貰い、満足した槙島とは対照的に、彼を後ろから撃った狡噛の表情がかなり印象深かった。
佐々山の仇であり、絶対に許せない相手なのに。その相手を撃つ事だけを考えて、3年もの月日を費やしてきたのに。彼の表情に満足感は皆無だった。
ただ、空虚な悲壮感。何かが抜け落ちたようにも見えた。

復讐を果たしても、そこに自分の望むものは無い。
命の有無で言うならば、狡噛は生き、槙島は死んだ。正義と悪は分かたれて、勝負としての決着は狡噛に軍配が上がった筈なのに、満足感という意味では槙島の方が勝っていた…。

槙島聖護は、今のリアルな現代社会から見るとあまり違和感のない思考を根底に持っていた。やり方は別として、個が尊重され、個が自由に選択できる世の中を、自分自身の生き方としても望んでいた。でもその考え方は、あの時代には不釣り合いだった。シビュラが支配する世の中が是であるなら、それ以外のマイノリティは否となる。時代によって善と悪が何度も入れ替わるのに似ている。
どこかで聞いた、「槙島は生まれる時代を間違えた」という言葉が脳裏をよぎった。

彼が限りなく現代の思考に近い事で、シビュラの支配するあの世界が如何に今と違うか。如何に息の詰まりそうな世の中なのかを知ることができるだろう。同時に、決して今の生き方が当たり前では無い事、時代によって、大衆社会全体の認識によって、いとも簡単に当たり前が非なるものに様変わりするのだと思えた。


余談。
某所で、最終話の槙島絶命場面での演出。茜色の夕日が沈んで、夜の帳が静かに下りる、あのどこか美しいともとれる風景で、正午(聖護)→夕方(朱)→深夜(慎也)。または正午(聖護)→深夜(慎也)→夜明け(朱)と解釈してる方がいて、かなり面白い解釈だなぁと思いました。
二人の名前が昼と夜、正午と深夜に掛かってるってのは何となく解っていましたが。最終話の流れを、或いは二期への流れを、そういう意味で表現してるとしたら、スタッフさんすごい!(飽くまで憶測でーす)
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