先日、ポケモンサン・ムーンの殿堂入りをして、エンディングを見たので感想を纏めましたが、今回はシナリオの”黒幕”さんに関する考察を少しだけ纏めます。
勿論、個人の見解なので正解は解りません。でももしかしたらこうだったかもしれない…という体で自分なりに考えたものなので、可能性の一つとして捉えて頂けたらと思います。
がっつりバッチリ、ストーリーのネタバレしてますので閲覧にはご注意を。
宜しければ「続き」から―――
【エーテル財団の真の顔】
今回のサンムーンでの”黒幕”はスカル団では無く、エーテル財団。それもルザミーネだったわけですが、スカル団が噛ませっぽいな~って感じは、発売前のPVで何となく解っておりましたし、エーテル財団の”違和感”も何となくはあったんですよね。
そもそも、何もかもが”真っ白”ってちょっと怖くないですか?
純白という色は穢れの無い正義感や無償の善意を彷彿とさせますが、逆に言えば”穢れ”を一切許さない、という風にも取れるんですよね。詰まり、自分達の慈善事業を一つの思想とすると、その型から逸脱する思想を”悪”と解釈してしまったり、その思想(善)の為なら多少の強硬な手段や理念は致し方ないという過激な思想が隠されていたり…(結果的に最良になるなら、毒を以て毒を制す。的な)
財団に最初に降り立った時、その時はまだポケモンの保護を目的とした慈善財団の雰囲気だったんですが、建物も制服も、何もかもが真っ白過ぎて逆に怖かった印象でした。
何より、既にルザミーネの台詞が怖かった(
当たり前のように「わたくしの愛しいポケモンたちを愛する」とか言えちゃう人ですよ?
子供は大人の言う事を聞いていればいいのです、といった一方的な発言もありましたねぇ。
今思うと、そういう考え方もグラジオ・リーリエとの確執を如実に表していたのかもしれませんが……。
しかし、よくよくストーリーを追ってみると、財団自体はそれ程悪では無かったようですね。傷ついたポケモンの保護というスタンスは、本当に慈善事業として行われていたようですし。寧ろおかしかったのはルザミーネ(トップ)だった、と。
ですが、各地に散らばっている財団職員の数人の素行、エーテルパラダイスに潜入した際にバトルとなった職員の態度を見ていると、強ちルザミーネだけが狂っていたという訳でもない様子。
財団自体は慈善団体で、その中にはビッケのように真摯に取り組む職員もいるが、一方で財団の財力や権力、思想を利用して良からぬ事を目論む輩、ルザミーネの考えに賛同する輩というものもいた、という事でしょうか。
ザオボーなんて、出世欲の塊でしたし。財団の慈善事業に賛同して尽力していた、とはお世辞にも言えない感じでした(ED後の再バトルでは平社員に降格したらしいですが、猫をかぶってまた出世してやるなんて言ってましたし…矢張りこういう性格の人員が何人も財団の内部に居た様子)
【ルザミーネ親子の関係】
エーテル財団の代表にして今作の悪役のラスボス、ルザミーネ。
シリーズ的には初の女性ボス、ということになりますね。
シナリオ中の彼女の行動や言動を見ていると、胸糞悪くなった人も多かったのでは。
実の子供であるグラジオとリーリエに対して、かなり高圧的な態度でしたし、UBに関しては心酔・陶酔しているレベルで執着しているようでした。
でもリーリエが断片的に話してくれた事から解釈するに、彼女は元からあのようにUBに執着したり、ポケモンを私物化してコレクションのように展示して手元に置いておこうとする性格では無かったようですね。
雨の中 外で一人踊っていたら 驚いたかあさまが飛んできて 一緒に踊った。
二人して風邪を引いて 二人で一緒にベッドで眠ることになってしまったけれど とても嬉しかった。
そのような事をリーリエがナッシーアイランドでの雨宿りの際、語ってくれています。
上記の話から察するに、昔は優しい母親だった。少なくともリーリエが幼少期の頃までは、子供思いのごく普通のお母さん、だったと思うんですよね。では何故、あのようになってしまったのか。
ED後、エーテル財団を訪れると、グラジオから嘗て家族に何があったかを聞くことができます。
UBの存在を発見したのはグラジオたちの父親(ルザミーネの夫)であること。
その研究に父親は没頭していたこと。
研究途中にウルトラホールに飲みこまれて、消息が不明になったこと。
父親が行方不明になった辺りからルザミーネがUBに執着し始めたようだということ。
これらの情報を踏まえて、グラジオがタイプ:ヌルを連れて財団を出て行ったことをきっかけに益々豹変していったことを思うと、ルザミーネの異様な執着の根底にあるものが少しだけ見えたような気がしました。
彼女の過激な行動の根っこにあったもの。それは「バラバラになった愛する者たちへの執着であり、抜けた穴を埋めるためのものだったのでは?」ということでした。
UBの研究途中で夫が行方不明になり、彼女がショックを受けたのだとしたら。彼女がその夫が没頭していた研究に手を出すことは、あり得ないことではないと思います。
夫の行方を探すため?
それとも夫が求めいたものを自分も求めることで、夫のいない寂しさを埋めるため?
理由は解りませんが、夫が行方不明後に段々UBに気持ちをシフトしていったのには、必ず原因があるんですよねぇ。
そうして進んだ計画の上でタイプ:フルという、対UB捕獲用の戦闘ポケモンが生み出されるワケですが、そのタイプ:フルはルザミーネが望むような完璧な戦闘ポケモンにはなり得なかったようで、タイプ:ヌルと改名された人工ポケモンは不具合や欠陥が相次いだことで永久凍結処分されることになっていたようです。そんな彼らを憐れに思ったグラジオは、母の行き過ぎた思想とUBへの異常なまでの執着心に心を痛め、憤りを覚えていた様子。
まぁ、異空間のポケモンを捕獲する為に戦闘用のポケモンを自分たちの技術で作って、失敗したから凍結処分でなかった事にしようとしたくらいですからね。ポケモンを大事に思う当時のグラジオ少年からすると、相当許せなかったのでは無いかと…。
凍結処分が決まっていたタイプ:ヌルを連れ出して、財団から出て行った彼は、自分一人では到底母を止められないと解っていたから強くなることを望み、その為に放浪の旅に出たようですが、突然愛息子が凍結予定だったポケモンを黙って連れ出し更に家出したことで、ルザミーネは相当荒れて大変だったとリーリエが言ってましたね(にいさまが突然出て行って、大変だったのですよ…と言ってました)
彼女からすると、夫に続いて息子までがいなくなった事で益々心に穴が空いてしまったのかもしれません。
特に可愛がっていた子供なら、自分に歯向かって家出するなんて思ってもいなかったでしょうから。悲しいという気持ちよりも、裏切られたという怒りの気持ちの方が強かったかも…。それが更に彼女の心と考えを独善的な暴走へと向かわせていくきっかけになったと考えるのは、少々出来過ぎでしょうか。
グラジオが家出して、どんどん加速するUBに対する執着。
ウルトラホールを開く為に必要なホシモッグのことでリーリエまでが黙って財団から「逃亡」する形となり、ルザミーネの家族に対する愛憎は決定的になったのではないかと思います。
自分が愛した筈の者たちは、自分の愛情とは裏腹にみんな自分の元を離れて。
ぽっかりと空いた大きな穴を埋める為に、どんどん執着心を膨らませていったのだとしたら。
財団の技術をもってすれば、自分の意図は容易く形になり、意のままになる。
簡単に失わないように、”裏切らない”ものを半永久的に自分の傍に置いておく。
UBに、ポケモンのコレクション化に、やたらこだわったのは、家族を失くした寂しさを埋め合わせるためのものだったとすると、彼女が狂ってしまった原因が一つなのでは無く、沢山のマイナスが連鎖していった結果だったのではないか、と私は思います。
当然そんなのは独り善がりであり、そんな思想で狂わされた者たちやポケモンたちを思うと決して許されるものでは無いですよね。
グラジオやリーリエに、ひどい罵倒を浴びせたことは一切共感できない事であり、ルザミーネが裏切ったようにも思えるグラジオたちが彼女を裏切らなかった、見捨てなかったことは唯一の救いですが、それでも彼女の狂信的な行動は単なる悪の組織の思想とは異なる意味での間違った行動だったのだと思います。でも、昔からそんな非道な人だったわけではなくて、長い時間、様々な要因が複合的に重なって、あのルザミーネを作り上げてしまったと考えると、研究に猛進していく一方で、ふとした時にバラバラになってしまった家族や行方知れずの子供たちを想う良心が、心の何処かに存在していたんじゃないかな?と思いたい節もあるんですよね。
最初は小さな綻びだった筈なのに、いつの間には後戻りすら出来ないところまで行ってしまった。
シリーズの悪役史上、Nにも似た不遇な境遇からの踏み外した道だったのかもしれません。
と、当然彼女にそこまでの殊勝な気持ちや、同情の余地がある境遇を経てきているかは私がストーリーを最後まで見て考察した事なので、真偽は不明です。
ですがグラジオが、
「もしかしたら、母は父の為にUBの研究に執着したのかもしれない。そうだったとしたら、俺たちは救われるんだけどな…」と語っています。
踏み外した道の発端が、愛する家族への想いだったら―――
この悲しくて苦い物語の一縷の救いなんだと思います。
そうであってほしいものです。